【New】お知らせ

上場企業の第三者割当増資|有価証券届出書の作成・提出実務をスモールキャップ向けに解説

上場企業の有価証券届出書の作成・提出実務のイメージ

スモールキャップ上場企業のIR担当・CFO向けに、第三者割当増資における有価証券届出書の作成実務を解説。

誰が何を書くのか・財務局事前相談で何を聞かれるか・資金使途でなぜ詰まるのかまで、有価証券届出書作成実務を手掛ける行政書士が実務経験踏まえて解説します。

この記事でわかること

  • 有価証券届出書の提出が必要になる条件
  • 3つの様式(通常方式・組込方式・参照方式)の違いと選び方
  • 誰が何を書くのか|発行体とアドバイザーの役割分担の線引き
  • 財務局との事前相談で何を準備し、何を聞かれるか
  • 資金使途の記載でなぜ詰まるのか、どう対応するか
  • 希薄化率25%ルールとスモールキャップが注意すべき点
目次

はじめに|有価証券届出書作成を「証券会社に全部お任せ」できない会社が大多数

上場企業が第三者割当増資を実施するとき、プライム上場企業のようなラージキャップ企業のIR部門はほとんど悩まない。

なぜなら、数億円以上のFA(ファイナンシャル・アドバイザリー)フィーを受領する証券会社が、増資(募集・売出し)FAのサポート業務の一環として有価証券届出書の作成から財務局(及び東証)対応まで引き受けてくれるからだ。

しかし、スモールキャップの上場企業はそうはいかない。

証券市場から評価されており、FAフィーが数億円規模に及ぶような増資案件でなければ、証券会社は有価証券届出書作成どころかFAさえも前向きには検討をしてもらいにくい。
※証券会社は引受業務(増資した株を一度証券会社で抱えてから顧客の投資家に販売をする業務)がメインのため、証券市場から評価されていない発行体の増資を引き受けにくい

かといって自社のIR部門にそのリソースがあるわけでもない。

引受先を自ら探してきた場合はFAもいない。

結果として「有価証券届出書を誰にどう頼めばいいか」「財務局とのやり取りをどう進めればいいか」という入り口の段階で詰まってしまうケースが少なくない。

この記事は、そのような状況に置かれたスモールキャップ上場企業のIR担当者・CFOに向けて書いている。

第三者割当増資における有価証券届出書作成を実際に行っている経験をもとに、実務のリアルを解説する。

第三者割当増資で有価証券届出書が必要になる条件

上場企業(開示会社)の場合

上場企業は有価証券報告書を提出している「開示会社」に該当する。

開示会社が第三者割当増資(募集株式の発行)を行う場合、発行価額の総額が1億円未満である等の例外を除き、有価証券届出書の提出が義務づけられている金融商品取引法第4条)。

提出先はEDINETであり、管轄財務局に対して事前相談を行ったうえで提出する。

例外|第三者割当増資で有価証券届出書作成が不要なケース

以下のケースでは第三者割当増資をしても有価証券届出書の提出義務が生じない、または臨時報告書等の提出で足りる。

スクロールできます
ケース対応
発行価額の総額が1億円未満
(1千万円超の場合は有価証券通知書が必要)
有価証券届出書の提出不要
発行価額の総額が1千万円以下有価証券通知書・届出書ともに不要
種類株式(普通株式以外)の発行臨時報告書の提出で足りる

なお、「少人数私募(50名未満への勧誘)」という概念は非開示会社(有価証券報告書を提出していない会社)に適用される区分であり、上場企業(開示会社)には適用されない。

開示会社の場合、勧誘する相手方の人数にかかわらず「募集」に該当し、発行総額が1億円以上であれば有価証券届出書の提出が必要となる(金融商品取引法第4条第1項関東財務局「有価証券通知書について」)。

スモールキャップ企業が行う第三者割当増資の多くは普通株式の発行であり、発行総額も1億円を超えるケースがほとんどであるため、実務上は第三者割当増資の際は有価証券届出書の提出が必要になると考えておくべきだ

有価証券届出書|3つの様式と選び方

有価証券届出書には3つの様式がある。

スクロールできます
様式通称概要
第2号様式通常方式証券情報+企業情報をすべて記載
第2号の2様式組込方式有報等の写しを綴り込む
第2号の3様式参照方式有報等を参照する形式

上場企業の場合、通常は組込方式または参照方式が採用される。

すでに有価証券報告書で企業情報を開示しているため、その情報を流用する形で有価証券届出書を構成できるからだ。

ただし、以下のケースでは通常方式によらなければならない可能性がある。

  • 1年間継続して有価証券報告書を提出していない場合(上場直後の企業など)
  • 有価証券報告書が適正に提出されていない場合(不適切会計・訂正報告書提出後など)

スモールキャップ企業の中には、上場から間もない、あるいは過去に開示上の問題があったケースも存在する。

どの様式を使うべきか判断に迷う場合は、財務局への事前相談で確認するのが確実だ。

どの様式を選択すればよいかについては、「有価証券届出書の様式はどれを選ぶ?通常方式・組込方式・参照方式の違いとスモールキャップ企業が陥りやすい落とし穴」でも解説しています。

誰が何を書くのか|第三者割当増資における有価証券届出書作成の役割分担

主な登場人物の整理

スモールキャップ上場企業が第三者割当増資を行い有価証券届出書を提出する場合の関係者は、主に以下の3者だ。(財務局、証券取引所は除く)

登場人物

  1. 発行体(IR担当者・CFO)
    増資の決定主体。取締役会・株主総会が機関決定を行い、IR部門が有価証券届出書作成の実務を担う。
  2. FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
    引受先の選定・紹介、増資条件の設計等を担う。証券会社が担うケースが多いが、スモールキャップ案件ではFAフィーの規模から証券会社が届出書作成まで引き受けることは少ない。なお、発行体が自ら引受先を見つけてきた場合はFAは不要であり、届出書作成アドバイザーのみアサインすればよい。
  3. 有価証券届出書作成アドバイザー(行政書士・弁護士)
    届出書の作成支援・財務局対応のサポートを担う。スモールキャップ案件では、FAと届出書作成アドバイザーが同一(FA兼アドバイザー)になるケースも多い。

役割分担の「線引き」

有価証券届出書作成において、よく発生する誤解がある。

「有価証券届出書の作成はアドバイザーに丸投げできる」という誤解だ。

実際にはそうではない。役割分担を考えるうえで最もわかりやすい線引きは、「発行体でなければ書けない情報か否か」 という基準だ。

発行体にしか書けない情報の代表例

  • 資金使途(金額の内訳含む)
    何をどこにいくら使うかは発行体の経営判断であり、アドバイザーが代わりに書ける性質の情報ではない
  • 割当先選定の理由・実態
    なぜその相手に割り当てるのかは発行体が説明責任を負う(FAなしで発行体が引受先を見つけた場合は特に)
  • 事業の現状・将来計画に関する記載
    業績見通しや事業戦略の説明は発行体側で記載・確認する

アドバイザーが担う部分

  • 有価証券届出書全体の構成・叩き台の作成(仮置きの内容を発行体に確認・修正してもらう前提で)
  • 記載要領・開示ガイドラインに照らした形式面の整備
  • 財務局・証券取引所事前相談の段取りと提出書類、やり取りの助言・サポート

また、有価証券届出書作成アドバイザーを雇う前に発行体が準備しておくべきこともある。財務局への事前相談前に、発行体側で最低限以下を実施しておく必要がある。

  • 割当先の資金証明の取得
  • 割当先の証券口座情報の取得
  • 割当先の反社会的勢力該当確認(反社チェック)

これらは発行体が主体的に動かなければ進まない事項であり、「アドバイザーに任せれば全部やってくれる」という前提で進めると、財務局への事前相談日程が大幅に遅れることになる。

財務局が事前相談にあたり提出を求めてくる資料を詳しく知りたい方は、「財務局・東証への事前相談|有価証券届出書提出前に準備すべきこと・聞かれること」を参照されたい。

有価証券届出書作成における行政書士と弁護士の違い

有価証券届出書作成アドバイザーとして行政書士と弁護士のどちらに依頼するか、という疑問を持つ発行体も多い。

結論から言うと、第三者割当増資の有価証券届出書の作成・アドバイス業務については両者の間に大きな差はない
その理由は、有価証券届出書の提出において「代理」という概念が馴染まないからだ。

増資の決定機関はあくまで取締役会または株主総会であり、委任状があったとしても弁護士・行政書士が発行体を「代理」することは認められないと考えるのが通常であろう。

つまり、弁護士でも行政書士でも、できることの範囲は実務上ほぼ同じだ。

強いて違いを挙げるとすれば、独立性に関する意見書(希薄化率25%超の審査対象案件で必要となる「経営者から独立した者による意見書」)は弁護士が作成することが多い一方、行政書士が意見書を作成することはない。

ただし、この意見書は有価証券届出書作成アドバイザーとは別の弁護士に依頼するケースが大半であるため、有価証券届出書作成業務における弁護士・行政書士の差とはならない。

財務局との事前相談|準備すべきことと聞かれること

事前相談は「義務」ではなく「実務上の必須プロセス」

有価証券届出書の提出にあたっては、本提出前に事前に管轄財務局に相談を行うことが強く求められる関東財務局「有価証券届出書の作成にあたっての留意事項」)。

法律上の義務ではないが、事前相談なしに有価証券届出書を提出した場合、記載の不備が後から発覚して訂正届出書の提出が必要になるリスクが高まる。

訂正届出書を提出すると待期期間(効力発生までの期間)が原則リセットされ、払込スケジュールに大幅な遅延が生じる。

なお、待期期間について例外的に有報・臨時報告書を提出したことを理由として、有価証券届出書の訂正届出書を提出したような、参照書類の更新のケースでは待期期間末日までに中3営業日あれば、当初の待期期間末日を変更せずに効力発生させることが可能となる場合がある。(待期期間のリセットなし)

事前相談先と提出先

管轄財務局は本店・主たる事務所の所在地によって決まるが、資本金の額等によって関東財務局(東京)が管轄となる場合がある。

具体的な管轄については、金融庁・各財務局のウェブサイトまたは直接照会で確認することを推奨する。

事前相談のタイミング

スクロールできます
様式事前相談のタイミング
組込方式・参照方式有価証券届出書提出予定日の概ね2週間前まで
通常方式有価証券届出書提出予定日の概ね1か月前まで
審査対象第三者割当の場合2か月を超えることもあるため、極力早めに相談

スケジュールを逆算するうえで、この事前相談のタイミングが全体の工程の起点になる。

取締役会決議日・払込期日から逆算して、事前相談の日程を先に押さえることが重要だ。

事前相談で準備するもの

事前相談に持参・事前送付するものの代表例を以下で一部紹介する。

  • 有価証券届出書・適時開示のドラフト(未確定事項は仮置きで可)
  • 割当先に関する情報(反社チェック結果・資金証明・証券口座情報)
  • 発行条件に関する資料(発行価格の算定根拠など)

財務局への事前相談の際に準備すべきことについて詳しく知りたい方は、「財務局・東証への事前相談|有価証券届出書提出前に準備すべきこと・聞かれること」の記事も併せてご覧いただくことを推奨する。

事前相談で最も重く見られる点|資金使途

事前相談において、財務局が最も詳細に確認してくるのが資金使途だ。

「10億円を調達する」と記載するだけでは足りない。

何を、どこに、いくら使うかを細かく記載する必要があり、かつその合計が調達額と一致することが求められる。余剰があってはならない。

さらに、その金額を使わなければならない根拠・実際にかかる費用の積算資料(見積書などの費用明細)の提出を求められることも多い。

特に注意が必要なのが「運転資金」という記載だ。

資金使途に運転資金と書いた場合、非常に厳しく確認が入ると考えておくべきだ。

なぜこれほど資金使途が厳しく見られるのか。

背景には、財務局が「有価証券届出書の正確性・実体性」を重視するからと考えられる。

増資により調達した手取り金を有価証券届出書の資金使途の通りに本当に使う予定があるのか、資金使途の通りに手取り金を活用するための計画はどのように考えていて、その計画を裏付ける証拠資料はあるのか。といった、正確性と実体性を財務局は非常に重要視する傾向がある。

だからこそ「この増資で調達した資金は、本当に届出書に記載した資金使途の通りに利用するのだ」という説明を、資金使途の記載や証拠の資料を通じて証明することが求められるのだ。

適時開示(証券取引所への開示)でも同様に資金使途の確認が入るが、財務局とは異なる視点での確認が入るうえ、増資を重ねると証券取引所の審査はさらに踏み込んで資金使途の妥当性を確認してくる傾向がある

有価証券届出書と適時開示の両方で整合性のある説明が必要なうえ、財務局、証券取引所がどのような点に重きを置いて確認をしているのか特徴を認識しておくことが必要だ。

財務局・証券取引所のそれぞれの特徴について知りたい方は、「財務局・東証への事前相談|有価証券届出書提出前に準備すべきこと・聞かれること」も参照いただきたい。

スモールキャップ企業が特に詰まるポイント

① 資金使途の記載

前述の通り、資金使途は全案件を通じて最も詰まりやすいポイントだ。

丁寧に説明したつもりでも必ずといっていいほど財務局から確認が入る。
記載の仕方や提出資料には有価証券届出書作成の経験が大きくものを言う。

自社で対応する場合に有効なのは、同じスキームで増資した他社の届出書をEDINETで参照することだ。
(ちなみに財務局への事前相談時の提出資料の中にも他社事例は含まれている)

ただし、初めての増資なのか、過去に増資経験があるか、あるいはなぜ再度増資するのかなど、増資の背景事情は会社ごとに異なる。
他社事例はあくまで参考であり、自社の状況に即した説明が必要になる。

特に債務超過や直近の業績が大きく悪化している会社は、資金使途への確認がさらに厳しくなる傾向がある。

そのような状況にある会社は、実務経験の豊富な専門家への依頼を強くお勧めする。

② 希薄化率25%ルール

スモールキャップ企業が第三者割当増資を行う場合、希薄化率が25%を超えるケースに引っかかることが多い。

東京証券取引所の企業行動規範では、希薄化率が25%以上となる第三者割当(大規模な第三者割当)については、経営者から一定程度独立した者による「当該割当の必要性及び相当性に関する意見書」の入手、または株主総会決議等による株主の意思確認のいずれかが必要とされている。

なお実務上は、株主総会決議より、意見書の入手による手法による方がメジャーである。

  • 希薄化率が25%未満:通常の手続きのみ
  • 希薄化率が25%以上:意見書の入手 or 株主意思確認が必要
  • 希薄化率が300%超:上場廃止の審査対象

希薄化率が25%を超えること自体は増資の禁止事由ではないが手続きや時間、費用が増える。

さらに短期間に複数回の増資を繰り返す場合は累積希薄化率が問題になるため、複数回増資を予定しているスモールキャップ企業は特に慎重な計画が必要だ。

希薄化率25%を超える第三者割当増資についてより詳しく知りたい場合、「審査対象第三者割当とは?希薄化率25%・300%ルールとスモールキャップ企業が直面する現実」を参照いただくとよいだろう。

第三者割当増資の有価証券届出書提出スケジュール

第三者割当増資における有価証券届出書の提出から払込完了までのおおまかな流れは以下のとおりだ。

STEP
引受先の選定・条件交渉

STEP
財務局への事前相談(届出書提出予定日の2週間〜1か月前)

割当先の資金証明・証券口座・反社チェックを事前相談前に準備。

STEP
取締役会決議(発行決議)

STEP
有価証券届出書の提出(EDINET)

STEP
待期期間(組込・参照方式は中7日、通常方式は中15日)

あらかじめ申し出れ(日程表提出)ば参照方式、組込方式は短縮が可能だが、審査対象第三者割当の場合は原則待期期間の短縮不可。
なお、記載に不備があり訂正届出書を提出すると待期期間が原則リセットされる。
例外的に、有報・臨時報告書を提出したことを理由として、有価証券届出書の訂正届出書を提出する場合は中3営業日短縮が認められることもある。

STEP
有価証券届出書の効力発生

STEP
総数引受契約の締結・払込

STEP
変更登記(資本金増加の登記)

STEP
有価証券報告書・臨時報告書等の提出

なお、訂正届出書が発生するとスケジュール全体がずれる。

訂正届出書を提出した場合、様式にかかわらず原則として中15日の待期期間が再度カウントされる(金融商品取引法第8条第2項)。

組込・参照方式で中7日で進んでいた案件でも、訂正届出書の提出によって中15日に延長されるため、払込スケジュールへの影響は大きい。

財務局事前相談を丁寧に行い、提出前に記載内容を固めておくことがスケジュール管理の最重要ポイントだ。

また、財務局への事前相談とは別に、東証(証券取引所)への事前相談も必要だ

東証の企業行動規範では、第三者割当を行う場合、公表予定日の遅くとも10営業日前までに、開示資料(案)を東証の上場会社担当者にメールで送付することが求められている(東証上場会社向けナビゲーションシステム)。

財務局と東証(証券取引所)、両方への事前相談スケジュールを並行して管理する必要がある点に注意が必要だ。

第三者割当増資における有価証券届出書作成の全体スケジュール感を詳しく知りたい方は「第三者割当増資の全体スケジュール設計|取締役会決議から払込完了まで逆算で組む実務ガイド」をご参照いただきたい。

有価証券届出書作成|まとめ

スモールキャップ上場企業が第三者割当増資を行う際の有価証券届出書は、「誰かに丸投げできるもの」ではない。

発行体にしか書けない情報(資金使途・割当先選定の理由など)があり、それを発行体が主体的に用意することが大前提だ。

その上でアドバイザーが形式面の整備や財務局対応のサポートを担う、という分担が実務の現実だ。

最も詰まりやすいのは資金使途の説明であり、「何をどこにいくら」という細かい説明と、調達額との一致が求められる。
この点は有価証券届出書作成の経験がものをいう部分であり、自信がない場合は早めに専門家へ相談することを勧める。

希薄化率25%ルールへの抵触・複数回増資による累積希薄化・債務超過下での増資など、スモールキャップ特有のリスクを把握した上でスケジュールを設計することが、クロージングを円滑に進める上で不可欠だ。

お問い合わせ・ご相談

有価証券届出書の作成・財務局対応についてのご相談は清水法務事務所にお問い合わせください。

野村證券投資銀行部門でエクイティファイナンスアドバイザー実績を持ち、スモールキャップ企業の有価証券届出書作成実務を手掛ける行政書士の立場から、資本政策全体を見据えたサポートが可能です。

FAQ(よくある質問)

上場企業が第三者割当増資をする場合、必ず有価証券届出書が必要ですか?

発行価額の総額が1億円未満の場合など一部の例外を除き、原則として必要です。種類株式の発行であれば臨時報告書で足りる場合がありますが、普通株式の第三者割当増資で発行総額が1億円以上の場合は有価証券届出書の提出が必要と考えてください。

有価証券届出書は誰が作成するのですか?

発行体(IR担当者・CFO)が主体となり、行政書士や弁護士等のアドバイザーが作成支援を担います。アドバイザーが叩き台を作成し、発行体が内容を確認・修正する流れが一般的です。資金使途・割当先選定の理由など発行体にしか書けない情報については、発行体が自ら用意する必要があります。

有価証券届出書作成は行政書士と弁護士、どちらに依頼すればよいですか?

有価証券届出書の作成・アドバイス業務については両者の違いは大きくありません。有価証券届出書の提出において「代理」という概念が馴染まないため、できることの範囲は実務上ほぼ同じです。なお、希薄化率25%超の審査対象案件で必要な「意見書」については弁護士が作成するケースが一般的です。

財務局への事前相談はいつ行えばよいですか?

組込方式・参照方式の場合は有価証券届出書提出予定日の概ね2週間前、通常方式の場合は1か月前が目安です。審査対象第三者割当(希薄化率25%以上等)の場合は1か月を超えることもあるため、極力早めに相談することが重要です。

資金使途に「運転資金」と書いてはいけないのですか?

禁止されているわけではありませんが、「運転資金」と記載した場合は財務局や証券取引所から厳しい確認が入ると考えてください。具体的に何をどこにいくら使うかを細かく記載し、その合計が調達額と一致するように組み立てることが求められます。

希薄化率が25%を超えると増資できないのですか?

増資自体はできますが、追加の手続きが必要になります。具体的には「経営者から一定程度独立した者による意見書の入手」または「株主総会決議等による株主の意思確認」のいずれかが東証の企業行動規範上求められます。なお希薄化率が300%を超えると上場廃止の審査対象になります。

訂正届出書を提出するとどうなりますか?

様式にかかわらず原則として中15日の待期期間が再度カウントされます(金融商品取引法第8条第2項)。組込・参照方式で中7日で進んでいた案件でも、訂正届出書の提出によって中15日に延長されるため、払込スケジュールへの影響は大きくなります。なお、証券情報に関する事項に係る訂正など軽微な内容については一定の短縮が認められる場合があります。財務局事前相談を丁寧に行い、提出前に記載内容を固めておくことが最大の対策です。

この記事は、第三者割当増資における有価証券届出書の作成に実際に関与した行政書士が、実務経験をもとに執筆しています。個別案件の判断は必ず専門家にご相談ください。

目次