第三者割当増資における財務局・東証への事前相談の進め方を、実務経験を持つ行政書士が解説。
有価証券届出書の事前相談はメールベースで進む実態・財務局が初回メールで求める提出書類の全容・財務局と東証の審査スタンスの本質的な違いまで、実際の案件経験をもとに解説します。
この記事でわかること
- 財務局と東証の審査スタンスの本質的な違い
- 事前相談の実態(メールベースで進む現在の運用)
- 財務局が初回に求める提出書類の全容
- 組込方式を使うために財務局が必ず確認する6つの質問事項
- 増資回数を重ねるごとに東証の審査が厳しくなる理由
- 事前相談前に発行体が済ませておくべき準備
はじめに|財務局と東証、審査のスタンスはまったく異なる
有価証券届出書の事前相談を「書類を見せて日程を確認してもらうだけ」と思っているIR担当者がいる。これは危険な誤解だ。
財務局と東証への事前相談で最初に理解すべきことは、両者の審査のスタンスが根本的に異なるという点だ。
財務局が見るのは「記載内容の正確性」だ。
有価証券届出書に書いてある情報が事実と一致しているか、提出書類との整合性が取れているかを実質的に審査する。
財務局は純粋な官公庁であり、増資回数が増えてもこの審査の厳しさはさほど変わらない。
東証をはじめとする証券取引所が見るのは「増資の質」だ。
希薄化のデメリットを上回るメリットがあると発行体が説明して増資を行ったにもかかわらず、計画した事業が失敗してさらに次の増資を繰り返すような事態を、東証は強く嫌う。
東証は私企業であり、自らの市場の信頼性を守ることに強いインセンティブがある。
このため増資回数を重ねるほど東証の審査は厳しくなる。
1回目の増資では財務局と東証はほぼ同程度の確認レベルだが、複数回増資を繰り返すと東証のチェックが回を追うごとに厳格化していく。
この違いを理解した上で、財務局には「書類の正確性・整合性」、東証には「事業計画の説得力・過去の実績との整合性」という別々の観点で準備することが、有価証券届出書・適時開示の事前相談を効率的に進める最大のポイントだ。
また、事前相談の実態についても押さえておきたい。
かつては財務局まで出向いて対面で話をする必要があったが、コロナ禍以降はメールベースのやり取りが標準になっている。
審査の場が「対面」から「書面」に移ったことで、記載内容の厳密さと資料の整合性への要求はむしろ高まっている。
さらに、案件の性質によっては「重点審査先」に指定され、複数の関係部署が連携して審査にあたる場合がある。
この場合、指摘事項はより広範かつ深度のある内容となり、事前相談の期間も通常より長期化する。
スケジュール設計の段階で、自社の案件が重点審査対象になり得るかを確認しておくことが重要だ。
重点審査先の詳しい内容については「審査対象第三者割当とは?希薄化率25%・300%ルールとスモールキャップ企業が直面する現実」を参照されたい。
有価証券届出書の事前相談の実態|財務局へ『出向く』時代は終わった
かつて財務局への有価証券届出書の事前相談は、担当者が財務局まで出向いて対面で話をする必要があった。
しかしコロナ禍を機にオンライン化が進み、現在の運用はメールでの相談がベースとなっている。
具体的な流れは以下のとおりだ。
まず財務局の担当部署に電話で連絡する。この電話で案件の概要を伝えると、担当監査官がアサインされる。
担当者が決まると、財務局側から「事前相談の進め方と提出書類」を記載したメールが届く。
このメールの内容が事実上の「審査の入口」であり、ここに列記された書類が揃わないと事前相談に着手してもらえない。
以後のやり取りは原則としてメールで行われる。
財務局からのコメント・修正要求も、有価証券届出書のワードファイルにコメント履歴を付ける形で送られてくる。
発行体・アドバイザー側も同じ形式でコメントに対応して返送する。
緊急性の高い事項については電話でのやり取りもあるが、記録が残るという観点から財務局もメールでのやり取りを原則としている。
この「メールベースのやり取り」という実態は、IRリソースが限られるスモールキャップ企業にとってはむしろ対応しやすい面もある。
ただし、メールのやり取りが積み重なると管理が煩雑になるため、誰が何をいつ送ったかを管理する資料一覧表の作成を財務局から求められることも多い。
財務局が有価証券届出書の事前相談で求める提出書類
担当監査官からの初回メールには、審査着手に最低限必要な提出書類のリストが記載されることが多い。
財務局より有価証券届出書の事前相談にあたり求められる書類は以下のとおりだ。
基本書類
| 書類 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 日程表 | 取締役会決議日・有価証券届出書提出日・効力発生予定日・払込期日等を記載 |
| 有価証券届出書ドラフト | ワード形式(.docx)必須。「.doc」形式はNG |
| 添付書類 | 定款・有価証券発行決議の議事録 |
| 適時開示ドラフト | 財務局は届出書と適時開示の整合性も確認する |
| 締結予定の契約書類 | 総数引受契約書・発行要項など |
| 評価書ドラフト | 株式・新株予約権・転換社債の評価書 |
| 参考にした他社事例 | 届出書作成にあたり参照した他社の届出書 |
提出書類のひとつである、日程表については自作のものではなく、財務局指定のフォーマットがあるため活用されるといいだろう。
日程表フォーマットについては「関東財務局 有価証券届出書の提出に関する事前相談について」のページを参照いただきたい。
手取金(発行諸費用)関連
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 発行諸費用の内訳がわかる資料 | FA契約書・エージェント契約書・届出書作成支援業務の業務委託契約書または発注書の写し |
資金使途関連
財務局が最も詳細に確認するのがこの領域だ。求められる書類は以下のとおりだ。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 資金繰り表(予定表含む) | 直近の現預金残高がわかる資料・連結精算表など |
| 使途ごとの算定根拠資料 | 提案書・企画書・事業計画書・取締役会議事録の写しなど、金額の積算根拠がわかる資料 |
| 支出予定時期の計画書 | 月次ベースで整理したもの |
| 借入金一覧表 | 借入金の返済原資とする場合(金銭消費貸借契約書の写しも必要) |
| M&A・買収関連資料 | 買収資金として使う場合(DD資料・候補先一覧・提案書・取締役会議事録など) |
なお、過去に増資の経験がある会社は、過去の増資の管理資料も求められる。
具体的には「過去に提出した有価証券届出書の資金使途への管理資料や対比表」と「総勘定元帳(科目:預金、過去の届出書提出日から直近まで)」の提出が求められる。
子会社等に資金を支出している場合は、関連する子会社の総勘定元帳も含めて求められる。
これは「前回の増資で調達した資金を、有価証券届出書に記載したとおりに使ったか」を財務局が確認するためだ。
増資回数が多い会社ほど、過去の資金使途の管理が問われる範囲が広くなる。
過去の調達資金の使途管理を日常的に記録しておくことが、次回増資のスムーズな事前相談につながる。
【事例】財務局から実際に来るコメントの性質
実務経験からくる私見にはなるが、財務局からのコメントは「質問」というより、記載内容の深掘りと証拠資料の提出要求が中心となる。
有価証券届出書のワードファイルにコメント履歴が付く形で送られてくるが、その内容は「この記載の根拠となる資料を出してください」「この金額の積算根拠を説明してください」という形式のものが多い。
実際の案件から、資金使途ごとのコメントの典型例を示す。
借入金返済を資金使途とした場合
「返済困難に起因する借入金返済のため」と記載した場合、財務局から以下の確認・資料提出が求められることになる。
- その借入金を借りた目的・経緯の説明
- 返済が困難になっている理由の説明
- 増資資金を充当して返済する予定の借入金の返済予定表
- 金銭消費貸借契約書の写し(返済日を変更している場合は変更契約書も含む)
単に「借入金の返済に充てる」と書くだけでは足りない。
なぜその借入をしたのか・なぜ返済できなくなったのか・どの借入をいつ返済するのかまで、一連のストーリーを資料で裏付ける必要がある。
投資・M&Aを資金使途とした場合
株式投資・M&Aを含む投資関係を資金使途とした場合、財務局から以下の確認が入る。
- 資金使途の積算根拠資料の提出
- その積算根拠の合理性についての説明
- 有価証券届出書に記載する支出予定時期の月次計画資料の提出
「〇〇への投資資金として〇億円」と金額を記載するだけでは認められない。
なぜその金額が必要なのかの積算根拠と、いつどのように支出するかの月次計画まで求められる。
M&Aを資金使途とする場合は、候補先の選定状況・交渉の進捗・デューデリジェンスの実施状況、更にそれらの意思決定を取締役会で議論を尽くしたのか(議事録)なども確認の対象になり得る。
これらのコメントへの対応は、アドバイザーが代わりに行えるものではない。
資金使途の積算根拠・借入の経緯・月次計画は発行体の経営判断に関わる情報であり、発行体が主体的に資料を用意して説明する必要がある。
有価証券届出書作成において、財務局との事前相談やり取りが長期化する最大の原因のひとつが、この資料準備の遅れだ。
割当予定先関連
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 実在性の確認資料 | 法人登記簿・株主名簿など(割当先がファンドの場合は組合契約等も) |
| 払込資力の確認資料 | 預金通帳の写し(直近3か月程度の入出金歴がわかるもの)・直近の決算書(残高証明書は一時点のものであるため通帳での確認が基本) |
| 払込原資が借入の場合 | 金銭消費貸借契約書の写し |
| 実態確認資料 | 調査機関の調査報告書(未受領の場合は、調査対象者一覧・法人登記簿・住民票・パスポート・健康保険証等の写し) |
事前相談にあたっての実務上の注意点
その他、有価証券届出書について財務局への事前相談をするうえでの注意点も列挙する。
細かい点だが、慣れていないと意外と見落とすことがあるので気を付けたい。
- ファイルにはパスワードを付し、パスワードは別メールで送る(Zip形式推奨)
- 1回のメールに添付するファイルのサイズは最大10MB程度(送ったつもりが送れてないケースあり)
- CCに入れるメールアドレスは合計3先以内
- 資料が多い案件では、送付資料一覧表(エクセル)の作成を求められる(資料名・送付先・送付日・修正送付日等の管理表)
- EDINETでの提出は17:15までが原則(延長は原則認められない)
財務局と東証|事前相談・審査スタンスの本質的な違い
はじめに触れた「両者の審査スタンスの違い」について、実務経験をもとにさらに詳しく解説する。
財務局:「記載内容の正確性」を見る
財務局が重点を置くのは、有価証券届出書に記載された内容が事実と一致しているかどうかだ。
財務局が最も嫌うのは「記載内容以外の事象が起きること」だ。
たとえば、有価証券届出書に記載した割当先と異なる人物に株式が渡ってしまったケース(転売等)で、結果として反社会的勢力に株が渡るといった事態は、財務局にとって最も避けたい事象だ。
このため財務局は、割当先の実在性・資力・実態の確認に相当の労力を割く。
有価証券届出書に記載した資金使途が実際の計画と整合しているか、その金額の根拠が示せるかも詳細に確認する。
財務局は純粋な官公庁であり、「開示書類の正確性を担保する」というミッションに忠実だ。
増資回数が増えてもこの審査の厳しさはそれほど変わらない。
東証:「増資の質」を見る
東証が重点を置くのは、増資が既存株主の利益を損なわない「質の高い」ものであるかどうかだ。
東証は自らの市場内で行われる増資を許可する立場にある。
発行体が「この増資による希薄化のデメリットを上回るメリットがある」と説明して増資を行ったにもかかわらず、計画した事業が失敗し、さらに次の増資でそれを補填しようとする事態を東証は非常に嫌う。
「質の悪い増資を東証が許した」という評価が投資家から下されることを、私企業である東証は強く避けようとする。
増資回数を重ねるごとに東証の審査は厳しくなる。
1回目・2回目の増資では財務局も東証もおおむね同程度の確認レベルだ。
しかし前回増資で事業計画の成果が出ず、さらに次の増資を繰り返すようになると、東証のチェックは回を追うごとに厳格化していく。
「前回の資金使途で何をどう実行したのか」「なぜ今回また増資が必要なのか」という問いへの説得力ある回答が求められる。
一方、財務局はこの「増資の質」への判断をあまり変えない。
財務局と東証のスタンスの違いが実務に与える示唆
財務局への対応は「書類の正確性・整合性」、東証への対応は「事業計画の説得力・過去の実績との整合性」 という観点で別々に準備することが効率的だ。
また、案件の性質によっては財務局から「重点審査先」に指定され、複数の関係部署が連携して審査にあたる場合がある。
この場合、指摘事項は通常より広範かつ深度のある内容となり、追加コメント・追加資料の提出を求められる場面も多くなる。
事前相談の期間も通常より長期化するため、日程表を提出する際には余裕をもったスケジュールの設定が必要だ。
審査対象案件も含めた全体スケジュールを詳しく知りたい方は、「第三者割当増資の全体スケジュール設計|取締役会決議から払込完了まで逆算で組む実務ガイド」をご参照いただきたい。
組込方式を使う場合の追加確認事項
組込方式(第2号の2様式)で届出書を提出する場合、財務局から「適正な継続開示義務の履行」に関する6つの質問への回答が求められる。
財務局への事前相談前に自社が該当するかどうかを確認しておくとよいだろう。
なお、自社がどの様式を選択できるかについては、「有価証券届出書の様式はどれを選ぶ?通常方式・組込方式・参照方式の違いとスモールキャップ企業が陥りやすい落とし穴」で詳しく解説をしている。
該当の有無を確認される6つの質問
過去1年間に以下のいずれかに該当しないかどうかが確認される。
- 有価証券報告書・半期報告書の提出を遅延した
- 臨時報告書を含む継続開示書類の提出を遅延した(適時開示は行ったが臨時報告書の提出が漏れていたなど)
- 有価証券報告書・半期報告書の虚偽記載にかかる課徴金勧告・課徴金納付命令・訂正勧告・訂正命令を受けた
- 不適正な会計処理の発覚などで社内に調査委員会を設置した
- 証券取引等監視委員会の調査が入った・入っている
- 有価証券報告書・半期報告書など継続開示書類の訂正を要するようなことがあった
いずれも該当がなければ回答書の提出は不要だ。
ただし該当がある場合は、「それでもなお適正な継続開示義務を履行していると考えられる理由」の説明が必要になる。
スモールキャップ企業の中には、適時開示の遅延・臨時報告書の提出漏れ・過去の訂正報告書の提出経験がある会社も少なくない。
これらに該当する場合は、財務局への事前説明の準備を早めに進めることが必要だ。
財務局と東証の事前相談を並行させる
財務局と東証はそれぞれ独立した機関であり、並行して進めることが基本だ。
| 相談先 | タイミング | 提出形式 |
|---|---|---|
| 財務局 | 届出書提出予定日の概ね2週間前(通常方式は1か月前)。審査対象案件は極力早めに | メールベース。ワード形式(.docx)でコメント履歴のやり取り |
| 東証 | 公表予定日の遅くとも10営業日前まで | 適時開示資料(案)をメールで提出 |
重要なのは、東証のコメントによって適時開示ドラフトに修正が入った場合、その修正内容を届出書にも反映させて財務局にも送る必要があるという点だ。
つまり東証と財務局のやり取りは独立しているようで連動しており、片方の修正が必ずもう片方にも影響する。
このため「東証が終わってから財務局」「財務局が終わってから東証」という順序は現実的ではない。最初から両者のやり取りを並行管理する体制が必要だ。
スケジュール設計上の目安
通常案件をベースとした取締役会決議(発行決議)を起点に逆算したスケジュール例は以下の通りだ。
より細かいスケジュールについて知りたい方は、「第三者割当増資の全体スケジュール設計|取締役会決議から払込完了まで逆算で組む実務ガイド」をご参照いただきたい。
①【T-10営業日以上前】
東証への開示資料(案)提出
②【T-14日前(組込・参照方式)or T-1か月前(通常方式)】
財務局への事前相談申し込み・書類提出
↓(財務局・東証のやり取りを並行管理)
↓ 東証コメント→適時開示修正→届出書修正→財務局へ送付
③【T日】取締役会決議・適時開示・届出書提出(EDINET、17:15まで)
④【T+中7日 or 中15日】届出書効力発生
⑤払込・変更登記
事前相談前の準備チェックリスト
財務局事前相談前に発行体が準備すべき事項
項目別に発行体が準備すべき資料のチェックリストを作成しているので、財務局への事前相談前に確認をしてほしい。
なお、あくまで以下は事前相談前に揃える初期的な資料であり、有価証券届出書のドラフトをやり取りしている中で、これ以外の追加資料についても要求されることは必須であることは理解しておきたい。
有価証券届出書・日程関連
- 使用する様式を確定した
- 有価証券届出書ドラフトを作成した(ワード形式・.docx)
- 日程表を作成した
- 適時開示ドラフトを作成した
- 参考にした他社事例の有価証券届出書を用意した
資金使途関連
- 調達金額と資金使途の合計が一致している
- 各使途項目について算定根拠資料(提案書・事業計画書等)を準備した
- 資金繰り表(予定表含む)を作成した
- 支出予定時期の計画書(月次ベース)を作成した
- 過去に増資経験がある場合、過去の資金使途管理資料・総勘定元帳を準備した
割当先関連
- 割当先の実在性確認資料(登記簿等)を取得した
- 割当先の資力確認資料(預金通帳の写し・直近決算書)を取得した
- 割当先の反社チェック(調査機関の調査報告書等)を実施した
- 調査機関の報告書が未受領の場合、代替資料(住民票・パスポート等)を準備した
組込方式を使う場合の追加確認
- 継続開示義務の履行状況(6項目)を確認し、該当がないことを確認した
- 該当がある場合、説明資料を準備した
東証事前相談前に準備すべき事項
- 公表予定日の10営業日以上前に東証への相談を申し込んだ
- 適時開示資料(案)を準備した
- 希薄化率を計算し、25%ルールへの抵触可否を確認した
- 過去の増資の実績・資金使途の達成状況を整理した
まとめ
財務局と東証への事前相談は、スケジュール上の通過点ではなく増資の成否を左右する実質審査の場だ。
有価証券届出書について現在の事前相談は財務局へ電話での担当者アサイン後、メールベースで進む。
財務局が初回に求める書類は多岐にわたり、これらが揃わないと審査に着手してもらえない。
特に資金使途関連の書類(算定根拠資料・資金繰り表・月次支出計画)と割当先関連の書類(実在性確認・資力確認・反社チェック)は発行体が主体的に準備しなければならない。
財務局と東証の審査スタンスの違いも重要だ。
財務局は記載内容の正確性、東証は増資の質を見る。
増資回数を重ねるほど東証の審査は厳しくなる一方、財務局の厳しさはさほど変わらない。
この違いを理解した上で、両者への準備を別々の観点で行うことが効率的な対応につながる。
お問い合わせ・ご相談
有価証券届出書・適時開示について財務局・東証への事前相談の準備・対応サポートについてのご相談は清水法務事務所にお問い合わせください。
有価証券届出書・適時開示ドラフトの作成から財務局・東証とのやり取り対応まで、実務経験をもとにサポートします。
FAQ(よくある質問)
財務局からのコメントはどのような形式・内容でくるのでしょうか?
財務局からのコメントは、有価証券届出書のワードファイルにコメント履歴を付ける形で送られてきます。
内容は「質問」というより、記載内容の深掘りと証拠資料の提出要求が中心です。
たとえば借入金返済を資金使途とした場合は「その借入の目的・経緯」「返済困難な理由」「返済予定表」「金銭消費貸借契約書」の提出が求められます。
投資・M&Aを資金使途とした場合は「積算根拠資料」「積算根拠の合理性説明」「支出予定時期の月次計画」が求められます。
これらへの対応は発行体が主体的に行う必要があり、アドバイザーが代わりに用意できるものではありません。
財務局への事前相談は対面で行く必要がありますか?
現在は対面で出向く必要はありません。
コロナ禍以降、運用がメールベースに移行しており、初回の電話で担当監査官がアサインされた後は、原則としてメールでのやり取りで進みます。
ワード形式の有価証券届出書ドラフトにコメント履歴を付ける形でやり取りが行われます。
財務局に提出する書類はどれだけありますか?
案件の内容によって異なりますが、基本書類(日程表・有価証券届出書ドラフト・適時開示ドラフト・評価書等)に加えて、資金使途関連(算定根拠資料・資金繰り表・月次計画等)・割当先関連(実在性確認・資力確認・反社チェック等)など多岐にわたります。
過去に増資経験がある会社は、過去の資金使途管理資料・総勘定元帳の提出も求められます。
資料が多い案件では、送付資料の一覧表(エクセル)の作成も求められることがあります。
財務局と東証、どちらの審査が厳しいですか?
審査の性質が異なります。
財務局は記載内容の正確性(書いてあることが事実かどうか)を重視し、増資回数にかかわらず一定の厳しさで確認します。
東証は増資の質(事業計画の説得力・過去の実績との整合性)を重視し、増資回数を重ねるほど審査が厳しくなる傾向があります。
東証のコメントで適時開示を修正した場合、有価証券届出書も修正が必要ですか?
必要です。
東証のコメントにより適時開示ドラフトに修正が入った場合、修正後の適時開示ドラフト(コメント履歴付き)と、それに平仄を合わせた有価証券届出書ドラフト(修正履歴付き)を財務局にも送付する必要があります。
財務局と東証のやり取りは独立しているようで連動しており、片方の修正が必ずもう片方にも影響します。
過去に増資経験がある会社は事前相談で何が追加で求められますか?
過去に提出した有価証券届出書の「資金使途への管理資料」と、過去の届出書提出日から直近までの「総勘定元帳(科目:預金)」の提出が求められます。
また、子会社等に資金を支出している場合は、関連する子会社の分も含めて求められます。
これは「前回の増資資金を届出書に記載したとおりに使ったか」を確認するためです。
過去の資金使途の管理を日常的に記録しておくことが、スムーズな次回増資につながります。
この記事は、第三者割当増資における有価証券届出書の作成・財務局および東証との事前相談に実際に関与した行政書士が、実務経験をもとに執筆しています。個別案件の判断は必ず専門家にご相談ください。
