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第三者割当増資の割当先はどう選ぶ?引受先の探し方・確認事項・審査で問題になるケースを解説

第三者割当増資の割当先選定フローと確認事項のチェックリストのイメージ

第三者割当増資の割当先の探し方・選定時の確認事項を実務経験から解説。

スモールキャップ企業の割当先の典型パターン・経営権目的の事前確認・反社調査で問題になった実例・海外投資家特有の審査リスクまで網羅します。

この記事でわかること

  • スモールキャップ企業の第三者割当増資における割当先の典型パターン
  • 純投資目的と経営権目的の違いと事前確認の重要性
  • FAを使わない場合の引受先の探し方の実態
  • 割当先の反社調査・資力確認で実際に問題になったケース
  • 海外投資家を割当先とする場合の特有の審査リスク
目次

はじめに|割当先の選定は「見つける」より「確認する」が難しい

第三者割当増資を検討するスモールキャップ上場企業にとって、割当先(引受先)の確保は増資の成否を左右する最初の関門だ。

しかし実務に携わってきた立場から言うと、本当に難しいのは割当先を「見つける」ことではない。

見つけた割当先が財務局・東証の審査に耐えられる相手かどうかを確認することだ。

引受の意向を示す投資家が現れても、反社調査で問題が発覚する、払込資力を証明できない、経営権への意図が不明確、といった理由で割当先から外れるケースは実際にある。

割当先が土壇場で外れれば、増資スケジュール全体が振り出しに戻る。

この記事では、スモールキャップ上場企業における割当先の典型パターン・探し方の実態・選定時に確認すべき事項・審査で問題になった実例を、実務経験をもとに解説する。

第三者割当増資の割当先の典型パターン

スモールキャップ企業で多い割当先の類型

実務で見てきたスモールキャップ上場企業の第三者割当増資では、割当先はおおむね以下の2類型に集約される。

① 投資ファンド(特に海外ファンド)

純投資目的、つまりキャピタルゲイン狙いで経営権には興味がないタイプの投資家だ。

海外の投資ファンドがこの類型に該当するケースが多い。

株価が割安と判断した銘柄に投資し、株価上昇後の売却益を狙う。

経営への関与は基本的に想定していない。

② 個人富裕層(経営権目的を含む)

もうひとつの典型が個人の富裕層だ。

特徴的なのは、中小企業オーナーとして資金力はあり、「上場会社の経営者になりたい」という経営権目的で投資する属性が一定数存在することだ。

この場合、単なる資金の出し手ではなく、増資後の経営体制に関わる意図を持っている。

経営権目的かどうかは事前に確認する

割当先の投資目的が純投資なのか経営権取得なのかは、増資の設計全体に影響する重要な確認事項だ。

経営権目的の場合、支配株主の異動を伴う第三者割当に該当する可能性があり、その場合は株主総会決議による株主意思確認が原則として必要になる。

また適時開示・有価証券届出書における「割当先選定の理由」の記載内容も変わってくる。

割当先の意向を曖昧にしたまま進めると、後になって「実は経営に関与したい」という話が出てきてスキーム全体の見直しを迫られることになりかねない。

投資目的の確認は、割当先との交渉の最初期に行っておくべきだ。

引受先の探し方の実態|FAなしのケース

既存の関係先からの紹介がメイン

「上場企業の第三者割当増資|有価証券届出書の作成・提出実務をスモールキャップ向けに解説」で解説した通り、発行体が自ら引受先を見つけてきた場合はFAが不要となり、有価証券届出書作成アドバイザーの費用のみで増資を実行できる

では、FAを使わない発行体はどうやって引受先を見つけているのか。

実務で見る限り、その中心はすでにビジネス上の取引がある先や、既存の出資者からの紹介だ。

  • 事業上の取引先(仕入先・販売先・業務提携先)
  • 既存株主・過去の出資者からの紹介
  • 経営者の人脈経由での紹介

まったくの新規で投資家を開拓するケースは少なく、何らかの既存の関係性を起点に引受先候補が現れるのが実態だ。

これは審査の観点でもプラスに働く。

既存の関係性があれば「なぜこの相手に割り当てるのか」という割当先選定理由の説明がしやすいからだ。

自力で見つけた割当先で実際に問題になったケース

一方で、発行体が自力で見つけてきた割当先が審査の過程で問題になるケースも実際にある。

実務で経験した2つの事例を紹介する。

事例①:割当先法人の「元株主」が反社の恐れありと指摘された

発行体が自力で見つけてきた法人の割当先について、その法人の元株主が反社会的勢力である恐れがあるとして財務局から指摘を受けたケースがあった。

ここで重要なのは、指摘の対象が割当先法人そのものではなく「元株主」だったという点だ。

財務局の反社調査は割当先本体だけでなく、その関係者(役員・株主等)にも及ぶ。

しかも現在の株主だけでなく過去の株主まで遡って確認される場合がある。

割当先の法人登記簿上はクリーンに見えても、資本の来歴に問題があれば審査で止まる。

事例②:社長を割当先にしようとしたが資金調達ができず外れた

発行体の社長(創業オーナー)自身を割当先とする計画で、社長が保有株式を担保にした融資で払込資金を調達しようとしたが、金融機関から株担保融資を断られ、結果として社長が割当先から外れたケースもあった。

このケースの教訓は、割当先の「払込資力」は申込時点の意向ではなく、実際に資金を用意できるかどうかで判断されるという点だ。

財務局は預金通帳の写し(直近3か月程度)による資力確認を求める。

借入で払込資金を調達する場合は金銭消費貸借契約書の提出が必要であり、融資の実行が確定していなければ資力の証明ができない。

なお、東証の自主規制法人も、割当先ファンドが払込財産の存在を説明できず第三者割当の実施を取りやめた実例を公表しており(東証「上場管理業務について―不適切な第三者割当の未然防止に向けて―」)、払込資力の確認は審査の最重要事項のひとつだ。

海外投資家を割当先とする場合の特有リスク

日本と海外で「与信の基準」が異なる

海外の投資ファンド・海外法人を割当先とする場合、国内投資家にはない特有の審査リスクがある。

日本の与信的な基準と海外の与信的な基準が異なるため、財務局に割当先の信頼性を理解してもらうために相当の労力を要するケースがあるのだ。

実際に経験した事例を紹介する。

ある海外法人は、本国では優良企業として現地の銀行から紹介を受けた先だった。

ところが日本国内では、その法人について反社会的勢力との取引の恐れがあるというネットベースの噂が流れていた。

外部の調査機関による反社調査を実施し、「反社会的勢力に該当しない」というレポートが提出された。

しかしそれでも審査は簡単には進まず、発行体として監査役・社外取締役・第三者委員会の意見書の提出を追加で求められることになった。

この事例から得られる教訓

①現地での評価と日本での評価は別物

本国の銀行紹介・現地での実績は、日本の財務局・東証の審査においてそのまま通用しない。日本国内での評判(ネット上の情報を含む)が審査に影響する。

②調査レポートだけでは足りない場合がある

外部反社調査で「シロ」のレポートが出ても、疑義を示す情報が存在する場合は、追加の説明資料(役員・委員会の意見書等)を求められることがある。

③海外割当先の案件は時間的余裕を最大限確保する

海外投資家を割当先とする場合は、通常の案件より審査が長期化する可能性を織り込み、スケジュール設計の段階で余裕を持たせておくべきだ。

割当先選定時の確認チェックリスト

実務経験と財務局・東証の審査事項をもとに、割当先の選定段階で確認すべき事項を整理した。

投資目的の確認

  • 純投資(キャピタルゲイン目的)か経営権目的かを確認した
  • 経営権目的の場合、支配株主異動の該当可能性を検討した
  • 保有方針(短期売却か中長期保有か)を確認した
  • 転売の意向の有無を確認した(東証への譲渡報告に関する確約書が必要)

実在性・実態の確認

  • 法人登記簿・株主名簿を取得した
  • 割当先の役員・現在の株主だけでなく、資本の来歴(過去の株主)も確認した
  • ファンドの場合、組合契約・組合員名簿を取得した
  • 反社調査を割当先本体+関係者の範囲で実施した

払込資力の確認

  • 預金通帳の写し(直近3か月程度)を取得した
  • 法人の場合、直近の決算書を取得した
  • 借入による払込の場合、金銭消費貸借契約書を確認した
  • 融資実行が確定していない資金計画に依存していないか確認した

海外投資家の場合の追加確認

  • 日本国内でのレピュテーション(ネット上の情報を含む)を確認した
  • 疑義情報がある場合、追加の説明資料(意見書等)の準備を検討した
  • 審査長期化を織り込んだスケジュールを設計した

割当先選定の理由は「発行体が」説明する

最後に重要な原則を確認しておきたい。

適時開示・有価証券届出書には「割当先を選定した理由」の記載が求められる(東証「第三者割当に係る上場制度の概要及び実務上の留意事項」)。

そしてこの説明責任を負うのは、アドバイザーではなく発行体自身だ。

「上場企業の第三者割当増資|有価証券届出書の作成・提出実務をスモールキャップ向けに解説」で解説した「発行体でなければ書けない情報」の代表例が、まさにこの割当先選定の理由だ。

なぜその相手なのか、どのような経緯で出会ったのか、その相手に割り当てることが既存株主にとってどのようなメリットがあるのか。

これらは発行体の経営判断そのものであり、アドバイザーが代筆できる性質の情報ではない。

割当先の選定と、その選定理由を説明できる状態を作ることは、増資準備の最初期から発行体が主体的に取り組むべき課題だ。

まとめ

スモールキャップ上場企業の第三者割当増資における割当先は、海外投資ファンド(純投資目的)と個人富裕層(経営権目的を含む)が典型パターンだ。

投資目的の確認は交渉の最初期に行い、経営権目的の場合は支配株主異動の手続きへの影響を早期に検討する必要がある。

引受先はビジネス上の既存取引先・出資者からの紹介で見つかるケースが多いが、自力で見つけた割当先が審査で問題になる事例は実際にある。

割当先法人の資本の来歴(元株主の反社疑義)、払込資力の裏付け(株担保融資の否決で割当先から外れた例)は、いずれも実案件で経験した落とし穴だ。

海外投資家の場合は日本と海外の与信基準の違いという特有の問題があり、現地で優良企業とされていても日本国内の評判次第で追加の説明資料を求められることがある。

割当先の「発見」はゴールではなくスタートだ。

審査に耐えられる相手かどうかの確認と、選定理由を発行体自身が説明できる状態を作ることが、増資成功の条件になる。

お問い合わせ・ご相談

割当先の適格性確認・反社調査の範囲設計・財務局への説明準備についてのご相談は当事務所にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

FAQ(よくある質問)

第三者割当増資の割当先はどうやって探せばよいですか?

実務では、すでにビジネス上の取引がある先(仕入先・販売先・業務提携先)や、既存の出資者からの紹介で見つかるケースが中心です。まったくの新規開拓は少なく、既存の関係性を起点に候補が現れるのが実態です。既存の関係性がある方が「割当先選定の理由」の説明もしやすくなります。引受先の紹介から必要な場合はFAへの依頼を検討することになります。

割当先の投資目的はなぜ確認する必要がありますか?

純投資目的か経営権目的かによって、増資の設計と必要な手続きが変わるためです。経営権目的の場合、支配株主の異動を伴う第三者割当に該当する可能性があり、株主総会決議による株主意思確認が原則として必要になります。交渉の最初期に投資目的を確認しておかないと、後からスキーム全体の見直しを迫られるリスクがあります。

割当先の反社調査はどの範囲まで行う必要がありますか?

割当先本体だけでなく、役員・株主等の関係者まで含めて実施すべきです。実際の案件で、割当先法人の「元株主」が反社会的勢力である恐れがあるとして財務局から指摘を受けた事例があります。現在の株主だけでなく資本の来歴まで確認される場合があるため、最初から広い範囲で調査を実施しておくことがスケジュール遅延の防止につながります。

割当先の払込資力はどう証明しますか?

預金通帳の写し(直近3か月程度の入出金歴がわかるもの)が基本です。残高証明書は一時点の情報のため不十分とされます。法人の場合は直近の決算書、借入による払込の場合は金銭消費貸借契約書も必要です。融資の実行が確定していない資金計画は資力の証明になりません。実際に、株式担保融資を前提としていた割当先が融資を断られ、割当先から外れた事例があります。

海外の投資ファンドを割当先にする場合の注意点はありますか?

日本と海外で与信の基準が異なるため、本国で優良企業とされていても日本の審査ではそのまま通用しない場合があります。実際に、現地銀行の紹介を受けた海外法人について日本国内で反社取引の噂が流れており、外部反社調査で問題なしのレポートが出た後も、監査役・社外取締役・第三者委員会の意見書の提出を追加で求められた事例があります。海外割当先の案件は審査長期化を織り込んだスケジュール設計が必要です。

この記事は、第三者割当増資の割当先確認・財務局対応に実際に関与した行政書士が、実務経験をもとに執筆しています。個別の事例は個社が特定されない形で記載しています。個別案件の判断は必ず専門家にご相談ください。

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