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株主資本等変動額とは|組織再編で資本金がいくら増えるかを決める数字

株主資本等変動額とは|組織再編で資本金が増える仕組みのイメージ

経営管理ビザの資本金要件が3,000万円に引き上げられて以降、「合併や株式交換で資本金を増やせないか」という相談が増えている。

このとき必ず突き当たるのが、株主資本等変動額という耳慣れない用語である。

会社計算規則に登場するこの概念が、組織再編で資本金をいくら増やせるかを決定する。

ここを理解していないと、スキームを組んでも要件を満たせない、あるいは登記が通らないという事態になる。

本記事では、株主資本等変動額を貸借対照表の構造から解説する。

企業会計に馴染みがなくとも読み進められるよう基礎から入り、会社法の条文で橋を架け、最後に入管実務への接続を示す。

目次

前提:貸借対照表「純資産の部」の構造

株主資本等変動額を理解するには、まず貸借対照表の右下、純資産の部の構造を押さえる必要がある。ここから始める。

資産・負債・純資産の関係

貸借対照表は次の等式で成り立っている。

資産 - 負債 = 純資産

資産が1億円、負債が7,000万円なら、純資産は3,000万円である。

純資産とは、会社の財産から借金を差し引いた正味の価値を意味する。

純資産の部の内訳

その純資産は、さらに次のように細分化される(会社計算規則第76条)。

純資産の部
├─ 株主資本
│ ├─ 資本金 ← 登記される。入管が見るのはここ
│ ├─ 資本剰余金
│ │ ├─ 資本準備金
│ │ └─ その他資本剰余金
│ ├─ 利益剰余金
│ │ ├─ 利益準備金
│ │ └─ その他利益剰余金
│ │ ├─ 任意積立金
│ │ └─ 繰越利益剰余金 ← 毎期の利益が積み上がる
│ └─ 自己株式(△)
├─ 評価・換算等差額等
├─ 株式引受権
└─ 新株予約権

実務上決定的に重要なのは、登記事項証明書に記載され、入管が確認するのは「資本金」の一項目のみという点である。

純資産が3,000万円あっても、その内訳が資本金500万円・繰越利益剰余金2,500万円であれば、経営管理ビザの資本金要件は満たさない。

出入国在留管理庁のQ&A問7も、資本準備金・資本剰余金・利益剰余金は「事業の用に供される財産の総額」に含まれないと明言している(在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について)。

「株主資本等」という括り

ここまでの構造を踏まえると、条文にいう「株主資本等」の意味が見えてくる。

株主資本(資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式)に、評価・換算等差額等などを加えた概念である。

株主資本等変動額とは、組織再編によって存続会社(または親会社)の株主資本等が増加する総額を指す。

ここで重要なのは、この金額がそのまま資本金になるわけではないという点である。

増加額は資本金・資本準備金・その他資本剰余金のいずれかに配分され、どう配分するかは合併契約等で決める第6章)。

したがって資本金を増やす手順は、次の二段階になる。

第一段階:株主資本等変動額がいくらになるかを確定させる(第2章〜第5章)

第二段階:そのうちいくらを資本金に計上するかを契約で定める(第6章

第一段階の金額が資本金増加額の上限を画し、第二段階で実際の増加額が決まる。

以下、この順に見ていく。

株主資本等変動額とは何か

定義の所在

会社計算規則第35条第1項は、吸収合併について次のように規定する。

吸収型再編対価の全部又は一部が吸収合併存続会社の株式又は持分である場合には、吸収合併存続会社において変動する株主資本等の総額(以下この条において「株主資本等変動額」という。)は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法に従い定まる額とする。

条文上は「変動する株主資本等の総額」とだけ書かれている。

抽象的だが、実質は次のように理解すればよい。

平易な言い換え

合併とは、存続会社が「消滅会社という財産のかたまり」を受け取り、消滅会社の株主に対価を交付する取引である。

この対価は株式に限られず、金銭その他の財産でもよい(会社法第749条第1項第2号。詳細は第5章)。

このうち、対価として存続会社の株式を交付する場合を考える。

この場合、存続会社は「消滅会社という財産のかたまり」を受け取り、その見返りに自社の株式を発行していることになる。

会社を設立するときに、発起人が現金を払い込んで株式を受け取るのと構造は変わらない。

違うのは、払い込まれるのが現金ではなく「会社まるごと」だという点だけである。

株主から財産の出資を受けて株式を交付しているのだから、資本金が増える余地が生まれる。

そして、受け取った財産のかたまりの正味の価値、すなわち資産から負債を差し引いた金額が、株主資本等変動額である。

消滅会社の資産 1億円
消滅会社の負債 △7,000万円
─────────────────────
株主資本等変動額 3,000万円

この3,000万円が、存続会社の株主資本等の増加額となる。

そしてそのうちいくらを「資本金」という科目に計上するかを、合併契約で決める

これが組織再編で資本金が増える仕組みの全体像である。

増資との対比

増資(募集株式の発行)と比較すると理解しやすい。

以下は対価が存続会社の株式である場合を前提とする。

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増資吸収合併
会社が受け取るもの現金消滅会社の財産(純額)
会社が交付するもの株式株式
資本金計上の上限払込金額(会社法445条1項)株主資本等変動額(計規35条2項)
上限の半分まで準備金にできるかできる(会社法445条2項)配分は契約で自由に決定

つまり株主資本等変動額は、増資でいうところの「払込金額」に相当する

ここを押さえれば、あとは応用である。

なぜ「消滅会社の資本金」が引き継がれないのか

実務でもっとも多い誤解が、「吸収合併すれば消滅会社の資本金が存続会社の資本金に加算される」というものである。

これは誤りである。

誤解が生じる理由

合併により消滅会社の権利義務は包括承継される(会社法第750条第1項)。

資産も負債も契約も従業員も、すべてが存続会社に移る。であれば資本金も移りそうに思える。

しかし、資本金は「権利義務」ではない。

資本金とは、株主が払い込んだ財産のうち会社が資本として計上した金額を示す計数にすぎず、承継の対象となる財産ではない。

条文上の根拠

会社計算規則第35条第2項は次のように定める。

前項の場合には、吸収合併存続会社の資本金及び資本剰余金の増加額は、株主資本等変動額の範囲内で、吸収合併存続会社が吸収合併契約の定めに従いそれぞれ定めた額とし、利益剰余金の額は変動しないものとする。

増加額の上限は「株主資本等変動額」であって、消滅会社の資本金ではない。

条文には消滅会社の資本金への言及すら存在しない。

帰結:債務超過会社を合併しても資本金は増えない

この帰結として、次の事態が生じる。

消滅会社の登記上の資本金が3,000万円であっても、その会社が債務超過であれば、存続会社の資本金は1円も増えない。

資産8,000万円・負債1億円の会社であれば、正味の価値は△2,000万円である。

受け取る財産の価値がマイナスなのだから、資本金が増える道理がない。

会社計算規則第35条第3項は、株主資本等変動額が零未満の場合の処理を定めており、資本金、資本準備金及び利益準備金の額は変動しないと明記している(詳細は第7章)。

登記事項証明書に記載された資本金の額だけを見て「この会社を合併すれば3,000万円になる」と判断すると、決算書を見た段階で計画が崩れる。

必ず貸借対照表を確認する必要がある。

例外:会社計算規則第36条

なお、消滅会社の株主資本を引き継ぐ処理が全く認められていないわけではない。

会社計算規則第36条は、対価の全部が存続会社の株式であり、消滅会社の株主資本等を引き継ぐ計算が適切な場合には、消滅会社の資本金・資本剰余金・利益剰余金の額をそのまま存続会社の変動額とすることができる旨を定めている。

ただし、これは「できる」規定であって義務ではなく、実務上は100%子会社同士の合併など共通支配下の限定的な場面で用いられる。

債務超過会社の資本金だけを引き継ぐ抜け道としては機能しない。

算定基礎は時価か簿価か

株主資本等変動額を「消滅会社の正味の価値」と説明したが、その価値をどう測るかが次の論点である。

帳簿に記載された金額(簿価)で測るのか、現在の市場価値(時価)で測るのか。

会社計算規則第35条第1項は、これを組織再編の性質によって区分している。

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場合の区分算定基礎
一号当該吸収合併が支配取得に該当する場合吸収型再編対価時価または吸収型再編対象財産の時価
二号存続会社と消滅会社が共通支配下関係にある場合対象財産の吸収合併直前の帳簿価額
三号前2号以外の場合帳簿価額

「支配取得」とは

支配取得とは、ある会社が他の会社(または他の会社の事業)に対する支配を新たに獲得することをいう(会社計算規則第2条第3項第31号)。

資本関係(支配関係)のない第三者との合併がこれに該当する。

この場合、経済的実態としては「他人の会社を買った」のと同じであるから、購入価格すなわち時価で測るのが合理的である。

企業会計基準第21号にいうパーチェス法(取得法)の考え方である。

含み益を資本金に計上できるのは、この類型のみである。

「共通支配下関係」とは

共通支配下関係とは、二以上の者が同一の者に支配されている場合等における当該二以上の者に係る関係をいう(会社計算規則第2条第3項第32号)。

ここでいう「者」には法人格のないものを含み、一時的な支配は除かれる。親子会社関係のほか、同一の株主(個人を含む)が両社を支配している場合を含む。

ここで注意を要する点がある。

「資本関係の有無」と「共通支配下関係の有無」は一致しない。

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状況資本関係共通支配下算定基礎
A社がX社株式を20%保有ありなし(支配に至らず)時価
A社がX社株式を60%保有ありあり簿価
オーナー個人がA社・X社を各100%保有なしあり簿価
A社とX社に一切の関係なしなしなし時価

3行目に注意されたい。

外国人経営者が個人で2社を保有している場合、両社の間に資本関係はなくとも共通支配下関係にあたり、簿価ベースとなる。

経営管理ビザの案件では「既に別会社も経営している」というケースが少なくない。

この場合、既存2社の統合では含み益を資本金に計上できず、簿価純資産が上限となる。

着手前に株主構成を確認すべき理由である。

なお法人税法上の「支配関係」判定では、一の者が個人である場合、その親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)等も「一の者」に含めて判定される(法人税法施行令第4条の2)。

配偶者や子が他方の会社を保有している場合も税務上は支配関係ありとされるため、会計上の判定と併せて確認が必要である。

対価が現金だと株主資本等変動額は発生しない

条文の冒頭に戻る。会社計算規則第35条第1項は、その適用場面を次のように限定している。

吸収型再編対価の全部又は一部が吸収合併存続会社の株式又は持分である場合には、…

すなわち、対価に存続会社の株式が含まれていることが、同条適用の絶対的な前提である。

現金対価では資本金は増えない

会社法第749条第1項第2号は、合併対価として株式のほか社債・新株予約権・金銭その他の財産を認めている。

2005年の会社法制定により対価が柔軟化され、現金のみを対価とする合併(交付金合併)も適法である。

しかし対価が全額現金の場合、会社計算規則第35条は適用されず、株主資本等変動額という概念自体が発生しない

したがって資本金は1円も増えない。

会計処理としては、受け入れた資産・負債を計上し、支払った現金を減少させ、差額をのれん(または負ののれん)とするだけである。

純資産の部は動かない。

直感的な説明
現金で会社を買うのは、不動産を買うのと同じ「資産の取得」である。会社の財布から金が出て、代わりに財産が入る。株主から新たな出資を受けたわけではないから、資本金が増える理由がない。

100%子会社の吸収合併も同様

100%子会社を吸収合併する場合、消滅会社の株主は存続会社自身である。

会社法第749条第1項第2号かっこ書は存続会社自身への対価交付を認めていないため、無対価合併となる。

株式を発行しない以上、計算規則第35条の適用場面に当たらず、資本金は増えない。

この点は実務上きわめて重要である。

「まず現金で株式を買い取って子会社化し、その後に合併して資本金を増やす」という二段階のスキームは、どちらの段階でも資本金が増えないため機能しない

一部保有の場合は按分される

では、存続会社が消滅会社株式を60%保有している場合はどうか。

残り40%を保有する少数株主に対しては株式を交付できるため、その部分について計算規則第35条が適用される。

ただし存続会社が既に保有する60%分は抱合せ株式であり対価が交付されないため、株主資本等変動額には含まれない。

したがって資本金計上の上限は、簿価純資産の40%相当額にとどまる。

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存続会社の持株比率対価交付資本金増加の上限
100%不可(無対価)ゼロ
60%少数株主40%分のみ簿価純資産 × 40%
0%(支配関係なし)全株主に交付時価純資産 × 100%

資本金を最大化したいのであれば、支配関係のない会社を株式対価で組織再編する以外に方法はない、という結論が導かれる。

変動額をどう配分するかは契約で決められる

株主資本等変動額は、あくまで上限である。その全額が自動的に資本金になるわけではない。

会社計算規則第35条第2項は、資本金および資本剰余金の増加額を「株主資本等変動額の範囲内で、吸収合併存続会社が吸収合併契約の定めに従いそれぞれ定めた額」とする。

受け皿となるのは3つの科目のみ

まず押さえるべきは、株主資本等変動額の受け皿になれる科目が限られていることである。

同項は「資本金及び資本剰余金の増加額」と定めたうえで、末尾で「利益剰余金の額は変動しないものとする」と明記している。

したがって、変動額を計上できるのは次の3科目に限られる。

  • 資本金
  • 資本準備金
  • その他資本剰余金(資本剰余金の内訳)

資本金と資本剰余金は別個の並列した科目であり、資本金は資本剰余金の一部ではない点に注意されたい。

条文が両者を書き分けているのはこのためである。

そして利益剰余金(利益準備金・繰越利益剰余金など)は、いくら変動額があっても増えない

この扱いは、会社法が資本と利益を厳格に区別していること(資本利益区別の原則)に由来する。

合併で受け入れる財産は、株主から出資された「資本」の性質を持つものとして扱われる。

会社が事業で稼いだ利益の蓄積である利益剰余金とは性質が異なるため、資本の箱(資本金・資本剰余金)にのみ計上し、利益の箱(利益剰余金)には入れない。

なお、消滅会社側に繰越利益剰余金が蓄積されていた場合も同様である。

消滅会社にとって利益の蓄積であった金額も、存続会社では株主資本等変動額として受け入れられ、資本金・資本剰余金に計上される。

「消滅会社の利益剰余金が存続会社の利益剰余金として引き継がれる」わけではない(会社計算規則第36条の例外を選択した場合を除く)。

3科目への配分は契約で決める

上記3科目のうち、株主資本等変動額をどう配分するかは合併契約で自由に決められる。

株主資本等変動額が3,000万円である場合、次のいずれの配分も適法である。

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配分パターン資本金資本準備金その他資本剰余金
A(全額資本金)3,000万円00
B(半額ずつ)1,500万円1,500万円0
C(資本金ゼロ)003,000万円

経営管理ビザ案件ではパターンA一択

前述のとおり、入管が確認するのは登記される資本金の額のみである。

したがって、合併契約書に「株主資本等変動額の全額を資本金に計上する」旨を明記しなければならない

会計実務では、登録免許税の節約や将来の減資手続の回避のため、パターンB・Cのように資本金への計上を抑える処理が一般的である。

依頼者が会計事務所に契約書作成を任せた場合、無意識にパターンB・Cが選択される可能性が高い

組織再編を用いたビザ対応を助言する場合、この点を関与者全員に共有しておく必要がある。

契約書の該当条項を確認せずに手続が進むと、登記完了後に「資本金が想定の半分しか増えていない」という事態になる。

登記実務上の証明

合併による変更登記では、資本金の額の計上に関する証明書の添付を要する。

この証明書では、資本金増加額が会社計算規則第35条第1項の株主資本等変動額の範囲内で、合併契約の定めに従って定められたことを証明する。

申請書および証明書の記載例は法務局が公開している(株式会社合併による変更登記申請書(法務省))。

株主資本等変動額がマイナスの場合

消滅会社が債務超過である場合、株主資本等変動額はマイナスとなる。

この場合の処理は会社計算規則第35条第3項が定める。

前項の規定にかかわらず、株主資本等変動額が零未満の場合には、当該株主資本等変動額のうち、対価自己株式の処分により生ずる差損の額をその他資本剰余金の減少額とし、その余の額をその他利益剰余金の減少額とし、資本金、資本準備金及び利益準備金の額は変動しないものとする。

要点は次の2つである。

  1. 資本金は減らない(増えもしない)
  2. マイナス分はその他資本剰余金・その他利益剰余金の減少として処理される

つまり債務超過会社を吸収合併すると、存続会社の資本金は据え置きのまま、剰余金だけが減少する。

存続会社の分配可能額が減り、将来の配当余力が失われる。

実務上の含意

債務超過会社の合併は、資本金要件の充足に寄与しないばかりか、存続会社の財務状態を悪化させる。

経営管理ビザの更新審査では、資本金の額だけでなく事業の安定性・継続性も審査対象となる。

剰余金が毀損した状態で更新申請に臨むことは、審査上の消極要素となり得る。

「資本金3,000万円の会社を合併すればよい」という発想で債務超過会社を対象に選ぶことは、二重の意味で誤りである。

手法別の条文対応表

株主資本等変動額の概念は、吸収合併に限らず組織再編全般に登場する。

手法ごとの条文は次のとおりである(会社計算規則)。

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組織再編の手法条文資本金が増える主体
吸収合併第35条・第36条存続会社
新設合併第45条〜第48条新設会社
吸収分割第37条・第38条承継会社
新設分割第49条〜第51条新設会社
株式交換第39条完全親会社
株式移転第52条新設完全親会社
株式交付第39条の2株式交付親会社

いずれの手法でも、資本金がどれだけ増えるかを株主資本等変動額が画するという基本構造は共通する。

ただし、その算定方法は手法によって異なる部分がある。

合併・株式交換・株式交付(吸収型)については、本記事で述べてきた枠組みがそのまま当てはまる。すなわち、

  1. 対価に自社株式が含まれることが前提となる
  2. 支配取得なら時価、共通支配下なら簿価で株主資本等変動額を算定する
  3. その範囲内で契約・計画の定めに従い資本金計上額を決定する

株式交換(第39条)および株式交付(第39条の2)についても、支配取得に該当する場合は時価を基礎として算定される。株式交付は既存の子会社を対象にできない制度であるため、実務上ほぼ常に支配取得となり、時価ベースでの資本金計上が可能である点は押さえておきたい。

一方、会社分割および新設型再編(新設合併・新設分割・株式移転)については、注意を要する。

  • 会社分割の対価は承継会社・新設会社の株式に限られず、吸収分割では金銭その他の財産を対価とすることもできる。対価の設計次第で株主資本等変動額の扱いが変わる
  • 新設型再編では、対象となる会社が新たに設立されるため既存株主資本を引き継ぐ処理がとられるなど、吸収型とは算定の枠組みが一部異なる

これらの手法を用いる場合は、該当する会社計算規則の条文を個別に確認する必要がある。

もっとも、経営管理ビザの資本金要件対応で用いられるのは、既存会社の資本金を増やせる吸収合併・株式交換・株式交付が中心であり、本記事の枠組みで対応できる場面が大半である。

入管実務への接続

ここまでの内容を、経営管理ビザ実務の観点から整理する。

相談を受けた際の確認順序

「合併で資本金3,000万円にできないか」という検討に着手する場合、次の順に確認する。

① 登記事項証明書ではなく、決算書(貸借対照表)を見る

対象会社の資本金の額は無関係である。確認すべきは純資産の額であり、債務超過であれば検討の余地はない。

② 株主構成を確認する

依頼者本人が両社を保有している、あるいは親族が保有している場合、共通支配下関係となり簿価ベースとなる。含み益を資本金に計上できないため、簿価純資産で3,000万円に届くかを確認する。

③ 対価の設計を確認する

対価に株式が含まれなければ資本金は増えない。相手方株主が現金を望んでいる場合、そもそもこのスキームは成立しない。

④ 資本金への配分を契約書に明記する

株主資本等変動額の全額を資本金に計上する旨を、合併契約書・株式交換契約書に明記する。

⑤ 税務の適格性を税理士に確認する

会社法上の資本金計上と法人税法上の適格性判定は別の軸である。非適格となれば含み益に課税され、その納税により純資産が目減りして3,000万円を割り込む可能性がある。

誤りやすいポイントの整理

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誤解正しい理解
消滅会社の資本金が引き継がれる引き継がれない。株主資本等変動額が上限
純資産があれば資本金にできる対価に株式が必要。現金対価では増えない
子会社化してから合併すればよい無対価合併となり資本金は増えない
資本関係がなければ時価ベース同一人が支配していれば簿価ベース
変動額は自動的に資本金になる契約で配分を定める必要がある

まとめ

  • 株主資本等変動額とは、組織再編により存続会社(親会社)の純資産が増加する総額であり、資本金計上額の上限を画する
  • 上限を決めるのは消滅会社の純資産であって、資本金の額ではない
  • 算定基礎は、支配取得なら時価、共通支配下関係なら簿価(会社計算規則第35条第1項)
  • 資本関係の有無と共通支配下関係の有無は一致しない。同一人が両社を保有していれば、資本関係がなくとも簿価ベースとなる
  • 対価に自社株式が含まれることが絶対条件。現金対価および無対価(100%子会社の合併)では資本金は増えない
  • 変動額の配分は契約で定める。経営管理ビザ案件では全額を資本金に計上する旨を明記する必要がある
  • 変動額がマイナスの場合、資本金は変動せず、剰余金のみが減少する

組織再編は資本の「置き場所」を変える手段であって、資本を「創り出す」手段ではない。しかし既に存在する事業価値を適切に資本金へ転換できれば、新たな資金調達を要さずに要件を満たせる場合がある。その可否を判断する物差しが、株主資本等変動額である。

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